
15年ほど前に、夕方にドライブで訪れたことしかなかった和束町の鷲峰山(じゅうぶさん)。
ここにはスリルたっぷりの行場があることは知っていたが、その時は時間がなく
行けなかった。近くの低山であることが災いし、これまで詳しく歩かずに放置していたが、
日曜日を怠惰に過ごすのもよくないと思い立ち、ともちゃんと出かけた。
原山バス停から、東海自然歩道の道標に従い、美しい茶畑の間を登っていく。
原山は、鎌倉時代に和束町に初めてお茶の木が伝えられた地だという。
それにしても、美しい幾何学模様だ。

この模様と満開のモチツツジに見とれているうちに、東海自然歩道からはずれ、
北東へ延びる林道を歩いていた。
清水谷川の細い沢が横切るところで、この沢沿いの薄い薄い踏み跡をとる。

2.5万図に、沢に沿った道が描かれており、これを詰めたら鷲峰山で
あることが、たやすく見て取れたからだ。
しかし、この道は途中で消えてはまた現れるという連続。ほぼ廃道といってよかった。
尤も、両側は植林。人が木を植えたところを歩けないわけがない。
沢登りの詰めのような雰囲気の中、左上に鉄製の橋が見えた。
どうやら、まともな道のようだ。

詰め上がってみれば、果たして東海自然歩道の標識があった。
間もなく水がなくなり、右上に竹やぶが見える。ジグザグに登ったら
あっけなく金胎寺の山門に出た。
山門は、新緑のカエデと苔で、空気が緑色に輝いて見えた。

なんと美しい空間であることか。
まずは山頂を目指す。行者堂や、多宝塔を見送る。

熟年ハイカーたちが弁当を広げていた。

宝篋印塔のある山頂は、恥ずかしながら全く記憶になかった。
遠く琵琶湖を眺めながら、初登頂のような喜びが湧き上がる。
金胎寺に戻り、本堂で「行場に行く」と告げ、入山料300円を支払う。
たいへん危険という行場だが、それを実際に確認したい。
人懐っこい万年青年お兄ちゃん(おじちゃんと呼んではいけない)が、行場案内の紙をくれた。
境内の中庭には、満開のシャクナゲがあった。樹齢150年という。
「この奥に、眺めのいいところがあるよ」ということで
万年青年お兄ちゃんに誘われてついていく。
遠く曽爾高原が望める眺めは確かにいいのだが、平らになったその展望台には、
ミニミニ鉄道の軌道が楕円形に敷かれていて驚いた。
聞けば、鷲峰山森林鉄道という、完全手作りの軌道だった。
元自衛隊という、この万年青年お兄ちゃんが私財をはたいて作ったそうだ。
もとい、森林鉄道の脇を通り、行場へ向かうことにする。
最初は植林の中。「行場の辻」で、左に下りる。
赤ペンキが親切に導いてくれる。
「東覗」、「西覗」を経て、めちゃめちゃ急な斜面を岩角やクサリを頼りに下る。
「胎内潜」をくぐり終えると、沢に近づく。形のいい滝「千手の滝」。

流れに木漏れ日が当たり、滝に虹が出ている。ラッキー。
虹を捉えた写真は、残念ながらちょっとピンボケだったが、
早速、金胎寺のホームページに掲載していただいた。
金胎寺と、行場については、下記URLを参照のこと。
http://www16.ocn.ne.jp/~jr3hps/kontaiji/index.html
次に「五光の滝」。2段20m。両脇の立派なスギがいい。(メイン写真)
前方に橋が見えるが、これは渡らない。沢を渡り返し、いよいよ登り返す番だ。
「護摩壇」、「鐘掛」と、岩場が始まる。
「鐘掛」は鉄鎖がかかり、ゴボウで登るしかない。腕力が試される。

続く「小鐘掛」は、赤ペンキで右足、左足とスタンスが書いてあって親切。
逆にしてみると、確かに異常に難しい。

「平等岩」の長い鉄鎖は、とても登ろうという気が起きない。
下部の6~7mほどは、足場もなく、ここもゴボウしかない。
右に岩稜の巻き道と、さらに右に樹木をアテにできる巻き道もあるが、
どれをとっても3級程度のクライミングができないと苦しいか。
今日は念のためザイルも持ってきたが、正面壁は断念。
岩稜の巻き道も、ソコソコ、スリルがある。もちろん落ちたら一巻の終わりだ。
次回、大勢で来たときに、登攀具もしっかりセットして挑もう。
※実際、当行場はたいへん危険で、事故例もあるそうだ。
ゴボウを余儀なくされる所もあるが、岩場の3点支持ができない人は
立ち入らないこと。
また、達人でも単独行は避けるべき。複数でも、セルフレスキューのための
30m程度のザイル、スワミベルト等は持参したい。
なお、この注書きの意味がわからないような人は、そもそも立ち入るべきではない。
「蟻の戸渡り」を経て、急斜面を登り詰める。
もとの「行場の辻」に帰り着き、ホッと胸をなでおろす。
金胎寺では、万年青年お兄ちゃんが出迎えてくれた。
しばらく話していたら、鷲峰山森林鉄道に乗せてくれた。

回生ブレーキ付きの車両で、なんと2周してくれた。
大のオトナが歓声をあげて乗る姿に、他の登山客が一眼カメラを向けていた。
おー、恥ずかしい。
この車両、しばしば、イベント等に刈り出されるそうで、その収益が行場等の
整備費になるという。
おじちゃんの話はたいへん興味深く、1時間近く話し込んでしまった。
東海自然歩道を忠実にたどって原山に戻る。
身近なところに、こんなワンダーランドがあったなんて!
今日の山行は、予想以上のビックリで、大満足である。